『懐かしくて新しい。今どき和室のススメ』
大工仕事に加え、建具・表具・畳・左官などの日本の伝統技術の粋が詰め込まれた木造建築の家の“和室’’。伝統が息づく和室は、客間や応接室などのもてなしの間としてだけではなく、日々の暮らしに活用できる汎用性の高い空間です。座卓と座布団を置いて宴席、文机にパソコンでリモー トワー ク。濯物を畳んだり、子どもを寝かしつけたりと家事育児にもお役立ち。
感染症の療養時には、和室ならではのゆるやかな間仕切りで、家族のお互いの気配が伝わり、安心感を覚えます。一 つの空間を多用途に活かせるのが和室の奥義。木や畳の親しみのある香りと温もりに、心身とも癒されます。
室における上座を示す床の間。美術品を飾り季節を演出することで視線を集めるこのアイスポットは、日本家屋特有の装飾スペ ー スです。和の室礼には本来、右図のような様式があります。室町時代の武家住宅から長い歴史を経て完成した形です。 伝統の和の感性をわが家流にアレンジして取り入れてみてはいかがでしょうか。
【写真左】和の室礼を現代風に簡素化。掛け軸のかわりに掛かっているのは麻のファブリックタペストリー 。
四季折々の花を飾って、おもてなしの気持ちを表現します。
【写真右】床脇の地窓からも光を取り入れた明るい和室。障子がやさしく心地よい陰影を作り出しています。床の間の前の畳は床の間に平行に敷くのが基本の様式。
配置:縁側(外側)に近い方を床の間にすることが多い向き:南向き(北床)東向き(西床)が良い。西日を避け掛軸が日に焼けるのを防ぐためと言われている
本床:正式な床の間の形。向かって左側に書院があり、左から採光(ほんどこ) する形式。反対に右側に書院がついたものを「逆床」という
床脇:床の間の隣で違い棚や天袋で構成された場所のこと。
(とこわき) 最近は省略されて収納になっているのが一 般的
伝統の意匠を現代の住まいに合わせてアップデート
子育て世代にこそ勧めたい「床座スタイル」の床座生活の魅力は数あれど、子育て世代にこそおススメしたいメリットがたくさんあります。座卓や座布団などの床座家具は移動可能で、押入れにしまえるものばかり。子連れの来客があっても、広々スペー スを簡単に作ることができ、クッション性のある「い草畳」の上では、けがの心配が少なくなります。誕生会もお泊まり会も、人数を限定することなく対応できます。
縁(ふち)を無くしてジンプルを追求襖というと黒い縁があるイメー ジですが、縁なしの坊主襖にするとシンプルでスタイリッシュに。畳も縁なしタイプにすると、より広がりを感じる和の仲まいが作れます。
世界に浸透する「和」。和風にとどまらない和室
和の様式に現代風をプラスした「和モダン」とは別に、近頃よく耳にする「ジャパンディ」というワー ド。日本の「ジャパニー ズ」と北欧の「スカンディ」が融合したインテリアスタイルを表す、海外発祥の造語です。北欧風に和のエッセンスを加える「ジャパンディ」。
和の暮らしが世界に求められています。
自然素材を活かした無駄のない意匠の雨楽な家」の和室には、和モダンも北欧テイストも素敵によくなじみます。写真和室の照明は竹を編んで作られた北欧家具メー カー 製。墨色の畳・円窓や障子とあいまって、個性的なデザイン性の高い空間に仕上がっています。