「雨楽な家」に住んで12年になる主婦の方に漆喰壁(しっくいかべ)について感想を伺いました。
『マンションに住んでた時と比べて「雨楽な家」は冬の窓ガラスの結露がゼロで、梅雨時でも収納の除湿剤が不要です。ビニールクロスは接着剤の匂いやうそっぽい素材感が嫌だけど、雨楽の漆喰壁は少しざらっとした本物の質感が好きです。温もり感のある穏やかな白さは12年たっても新築時と変わりません』と答えてくださいました。
今回のコラムでは「雨楽な家」のこだわりのひとつである「漆喰壁」の魅力について、メリットや吸湿性の実験の結果など交えて書いていきます。
漆喰自体の起源は相当古く、壁材としての歴史は5000年以上。古墳の壁画やエジプトのピラミッドの壁などにも用いられ、世界で最も安全な仕上げ材として世界遺産や国宝の建築物に使用されてきました。
1609年に建築され、400年以上が経過した現在でもその美しい姿を残す姫路城。重要文化材、世界遺産である姫路城は2015年の4月に大修理が行われましたが、その城壁は白く美しい漆喰で仕上げられています。
漆喰の語源は、石灰(せっかい)を唐音読みして「しっくい」となったと言われています。
唐音読みとは、鎌倉時代に中国から入ってきた音読みのことをいいます。
漢字は当て字のようで、江戸時代の頃から「漆喰塗り」という言葉が使われていたようです。
漆喰は昔から「呼吸する壁」とも言われており、湿度を調整し、家の中の嫌な臭いもとってくれます。
漆喰の主原料である石灰は、pH12.5という強アルカリ性で、ほとんどのカビやウイルスなどが生息できません。
そのため、病院や学校、保育園、老人施設など免疫力の弱い人が多く利用する施設や建物では、ウィルス対策としても活用されています。
神奈川県にある私立の学校では、教室の壁に漆喰を塗っています。
その学校では新型インフルエンザが流行した際にも、罹患した生徒が他校に比べ大幅に少なかったそうです。11月半ばまでの罹患者数はゼロ、その後中学生が4名かかったとのことでしたが、それまでの半年以上、小学校低学年に至るまで患者が出なかったといいます。
「漆喰壁」と「ビニルクロス貼」の吸湿性の比較実験をしてみました。
<実験道具>
①杉の箱 A:プラスターボード厚下地に漆喰壁、B:同様の下地にビニルクロス貼
②湯のみ茶碗(熱湯入り) ③温湿度計 ④フタ(透明ガラス板)
<実験方法>
漆喰壁の箱Aと、ビニルクロス貼の箱Bに熱湯入り湯のみ茶碗と温湿度計を入れ、ガラス板でフタをして10分ごとに湿度を計測しガラスの曇り具合を観察しました。箱の中の温度は30℃、湿度は53%となっています。
<実験結果>
計測してみると、ビニルクロスは実験後すぐに湿度が急上昇。その後は横ばいで下がりません。
一方、漆喰は湿度の上がり方が穏やかで、漆喰が湿気を吸収し湿度の上昇を抑えていることがわかります。
●漆喰塗りとビニルクロス貼の箱の湿度の変化の様子
●2時間が経過した漆喰壁とビニルクロス貼の箱の様子
実験開始から2時間後の写真を見てみると、右側のビニルクロスの箱は結露がひどく、湿度計の目盛りがほとんど見えません。
それに対して左側の漆喰壁の箱ではほとんど結露がありません。実験からも漆喰の優れた吸湿能力があることがわかりました。
ただし、漆喰も際限なく湿気を吸収し続けるわけではありません。適度な換気をして、漆喰の長所を活かした快適な生活環境をつくりましょう。
「雨楽な家」ではなぜビニルクロスを用いないかというと、防腐剤などの有害な化学物質が含まれた材料を使わず、出来るだけ自然の中に元からあった天然の素材で家をつくりたいからです。
もうひとつは、日本には「左官」という優れた伝統技術を持つ職人がいます。
「なで」「押さえ」「磨き」「あらし」など、コテの使い方、左官の腕ひとつで様々な質感をつくることができます。
「雨楽な家」の現場では施主様のご家族が左官の指導の元、漆喰塗りの体験をされることもあります。
家族が心身を休め子どもを育てる家こそ職人の手仕事でつくりたいのです。