写真の建物は、当初モデルハウスとして宮城県北部に建てられた「雨楽な家」です。
外壁のカラーは鉄紺色。浮世絵に見られる日本の伝統色で、深い青色に夏は庭の緑、冬は雪化粧がよく映えます。外壁から半間離れた位置には、1〜2階を貫く通し柱が立ち並び、その上に2階の深い軒がかけられています。
表玄関を開けると通り庭のような土間。土間の入口は北と南の2ヶ所にあり、北側の入口には外壁と同色の風除壁が設けられています。
土間の東側の大きなサッシからは、あふれんばかりの光が入ってきます。
障子を開けてリビングに上がると、井桁に組まれた梁のある吹き抜けの大空間が迎えてくれます。
こんな魅力的な木の家ですが、開放的な室内空間は冬にとても寒くなってしまうのでは?と考える方もいらっしゃるかと思います。
では、実際のところはどうなのか、検証してみました。
宮城県北部に建てられた「雨楽な家」で、1月下旬から2月上旬までの厳冬の時期に、毎日午後5時に室内に設置したエアコンをオフにして退室し、翌朝8時の入室時に玄関外と室内で温度と湿度を測定しました。
測定結果は下図の通りです。
室外の温度はマイナス4度〜0度の間ですが、室内は10度〜12度の一定範囲内を維持。
また、室外の湿度は70%から85%の間ですが、室内は35%〜50%を維持しています。
この結果から、この「雨楽な家」が断熱性と調湿性に優れ、冬もあたたかく快適な湿度を保ち、心地よく暮らせることが立証されています。
人は足元から寒さを感じると言われています。冷え性の人は足のつま先の冷えを訴えることが多いですが、足は直接床に触れているため、寒さにとても敏感です。
人の肌が直接触れる部分、特に床などは断熱の工夫が必要です。
床の表面温度を上げることができれば、体感温度は高まります。
床材料のちがいによる足の甲の温度変化を見ると、ビニールタイルやコンクリートに比べ、木材が一番温かい状態が保たれていることが分かります。木材の内部には空気が通る隙間があり、無垢材はここに空気を蓄えることができるので断熱効果が期待できます。
一方、集成材は接着剤でプレス加工されているため空気の通る隙間がなく、この特徴が生かされません。
その為、一般的な集合住宅などの集成材でできたフローリングを素足で歩くと冷たい印象が残るのです。
木の家が冬でもあたたかい理由は次のことが挙げられます。
「雨楽な家」では調湿性の高い自然素材をふんだんに採り入れることで、雨や雪の日もジメジメせず、常にさらりとした空気が包んでくれます。
低く深い軒は、雨や雪から建物を守るほか、夏の高い陽ざしをさえぎり、冬のあたたかな陽ざしを室内の奥まで届けてくれます。
これらのことが、北国の地でも日本の気候風土には木造軸組工法が適していることを証明しています。