日本の住まいで夏も快適に過ごす

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日本の住まいで夏も快適に過ごす


『家のつくりようは、夏をもって旨とすべし』

これは『徒然草』の有名な一節ですが、「冬は、いかなる所にも住まる。暑き比わろき住居は、堪へ難き事なり。」
と続きます。徒然草は鎌倉時代末期の1330年頃に吉田兼好法師によりまとめられたものとされている随筆です。その頃も日本の夏の暑さは堪え難いものだったようです。

現代の住まいは、優れた住宅設備や断熱材、電化製品等により夏も随分過ごしやすくなりました。
しかし、総務省消防署から発表されている「熱中症による救急搬送状況」によれば、熱中症の発生場所は3割から4割が敷地内全ての場所を含む「住居」なのです。

1.自宅での熱中症を防ぐポイント

熱中症の発症が多くなるのは、外の気温が28℃以上で、太陽が1番高くなる午後1時をピークに前後2~3時間といわれています。昼間に熱せられた壁や天井は夜に外気温が下がると部屋の空気を温めはじめるので、夜眠る時まで油断はできません。

● 外からの熱の侵入を防ぐ

太陽が高い日中だけでなく、入射角が低い朝日と西日に注意!窓から家の中に熱を入れないよう、日差しをしっかり遮りましょう。

● 家の中に風を通して温度のムラをつくらない

熱は高いところに、エアコンなどの冷気は底に溜まります。湿度が高くなりやすい狭い場所や水廻りも高温になります。
外気温が低い時間は窓からの風通しを利用し、日中はエアコンや扇風機、サーキュレーター等を使用して家の中の空気を循環させましょう。

通風と排熱に優れた土間と吹き抜け

写真は「雨楽な家」の吹き抜けのある土間の実例です。玄関土間から吹き抜けを通して2階にも風を送ります。
土間に打ち水をすれば、気化熱により周りの空気が冷やされて、より心地良い風が通り抜けます。

2.自宅のこんな場所・場面は熱中症に注意!

●キッチンでの料理中 ●高齢者が部屋で過ごす時 ●子どもが遊んでいる時 ●ペットと過ごす時 ●狭い場所・窓のない場所の掃除中 ●在宅ワーク中 ●入浴時 ●睡眠時 ●庭やベランダでの作業中

調理で高温多湿になるキッチンや、廊下や脱衣・洗面所等の空調の効いていない場所、トイレ等の狭い場所、お風呂などの湿度の高くなりやすい場所は注意が必要です。体調の変化に気付きにくい高齢者や子ども、ペットだけでなく誰でもいつのまにか熱中症になってしまう危険があります。無理をせず、換気をしたり冷却グッズの活用、こまめな休憩、水分補給に気をつけましょう。


3.日本の住まいの夏の対策

高機能な住宅設備も頼りになりますが、住まいづくりの際には、日本の夏を快適に過ごす為に考えられた伝統の家づくりの技や工夫、通風を意識した間取り等を上手に取り入れて、より良い住環境を目指したいですね。

●高い陽射しを遮る深い軒

日本家屋の特徴の一つでもある庇や深い軒は、夏は高い陽射しを遮り、冬の低い陽射しを迎え入れ、家を快適にしてくれます。夏場は軒下を
利用してよしずやすだれ、サンシェードを設置すると、外からの風を通しながら遮熱効果を増すことができます。


●障子とふすま

障子やふすまを開け放てば、部屋が繋がり、家全体に風の通り道をつくり出せます。そして、熱や湿気が一ヶ所に滞留することが防げます。


●タタミ

畳表の起伏やわずかな隙間、いぐさのスポンジ状になった内部に空気の層ができることで断熱効果が生まれ、爽やかな質感を保ちます。


兼好法師が暮らしていた時代の住まいと現代の住まいでは造り方が大きく変化しています。
しかし、深い軒や庭の木によってもたらせる日陰や室内に入ってくる風、自然の涼しさを心地良く感じるのは同じではないでしょうか。

夏は窓や扉を閉め切って1日中クーラーに頼るだけではなく、自然な汗をかいて、夏ならではの暑さと心地よさも感じたいものです。熱中症対策には、「十分な水分」と「適度な塩分」を意識的に摂ることを心掛けておきましょう。